お客様宅紹介 vol.200 B&W「801D4」& LINN / ACCUPHASE SYSTEM

東京都T様

去年の3月の終わりにT様から久しぶりに連絡がありました。「上遠野さん新しいDS聴きました?」「まだ聴いてないです」「えっ何で?すぐ聴かなきゃダメじゃん、怠慢だな」「いやいや、こないだ発表があったばかりでまだ日本に入ってきてないですよ」「発表時にはお客さんに聴かせるられるように準備しとかないとダメだよ。ダイナさんはLINNをたくさん売ってるんでしょ?そういう大事なことはメーカーにちゃんと言わなきゃ」・・・忖度という言葉の対極にあるストレートな口撃をまともに喰らって頭がクラクラ。定休日に電話に出てしまった自分をうらみつつ「ハイ」と小さな声で言うのが精一杯の私。「新しいのはプリにもなるんでしょう?今のシステムは場所取るからSACDもプリも処分して全部LINNで聴こうかなって思ってるんだ。俺ももう長くないしさ。システムをコンパクトにしたいんだ」「長くないって・・まだそんなこと言う歳じゃないでしょう」「上遠野さんもこの歳になれば分かるよ。とにかく今回のDSには期待してるから聴いたらすぐ感想教えて下さい!」

翌週、入荷したばかりのリンジャパンのデモ機を聴かせてもらいました。すぐにT様へ電話「メチャクチャ良いです!」「一回聴きたいな」「明日引き上げられちゃうので今晩なら」ということでお持ちしてお使いの「KLIMAX DS/3」との聴き比べ。Marianne Faithfull、The Cranberries、Van Morrison、Kim Carnes、Elton John、Coldplay、Madonna・・・無言で20曲ほど、冒頭を次々と聴かれるT様。5分ほどしてこちらを振り返り「じゃ、そういうことで」

「KLIMAX DSM/3」は9月に納品。そこからT様のオーディオスイッチが入ったのか昼夜問わず連絡が来るようになりました。「スピーカーを変えようかなと思って。何が良い?」「えっ、ノーチラスをですか!?」「低音が足りないんだ。エベレストだっけ、JBLのダブルウーファーはどうかな?」「良いスピーカーですけどノーチラスの気に入っていたところも無くなりますよ」「やっぱりそうか・・・俺、B&Wの音は好きなんだよな」「それにノーチラスは十分低音出てますよ。おそらく押し出しの強いGRANDIOSOからLINNに変えてスッキリと感じられているんだと思います。スピーカーの位置を見直しましょう」「位置はあそこがベスト。色々やったんだよ」「場所がベストならあとはイコライザーですね」「イコライザー?ノーチラスを入れた時に勧められて導入したけど音悪くてさ。すぐ処分したよ」「それって20年前の話ですよね?アキュフェーズの最新のはすごく良いですよ。試すだけ試したらどうですか。今の低音不足の原因が部屋にあるとしたらスピーカーを38cmに変えても同じです。他は思いつかないです」「ケーブル変えるのは?」「ケーブルは最後の仕上げです。まずは帯域のバランスとらないと」というやりとりを何度も、それこそ数ヶ月繰り返し、渋々「DG-68」を聴いていただけることになりました。これがドンビシャでした。30Hzから70Hzにかけてのいくつかの谷を補完すると広いリスニングルームに濃密な音が満ちたのです。ノーチラスはやっぱり凄い!T様はというと「なんでもっと早く勧めてくれなかったんだ」ときた。

これで一件落着と思ったのも束の間、「リッピングするかどうかの判断をするのにやっぱりSACDプレーヤーは必要なんだよね。30万くらいの一体型で適当なのない?」「適当って言ってもGRANDIOSOの音はでませんよ」「分かってるよ。録音の良し悪しがわかれば良いんだ。音はこだわらないから」本当かよと思いながらお聴かせすることに。それにしてもセッティングが決まると機器の差が怖いほど出ますね。案の定ダメ出しが3度、その度にグレードが上がり最終的にEnya Orinoco Flowの音、オーロラのヒダの美しさをダントツに細やかに表現できたACCUPHASE「DP-1000 / DC-1000」に決定。「良いんですか?システム全然コンパクトにならないですよ」「でもやっぱり音だよ。耳だって衰えるんだから聴けるうちに良い音を聴いとかないとさ」

オリジナルノーチラスは誰がどう聴いても文句なしの素晴らしい音になりました。しかし新たな問題が浮上します。爆音で楽しむT様の一部のトラック、Justin Bieber Hold OnやMadonna Rainでウーファーが「バチバチ」とビビるのです。ノーチラスのウーファーはチャンネルデバイダーで6dBあげているのに加えDGの補正も加わりストロークが限界を超えてしまったのでしょう。30Hzをわずかに0.5dB下げれば解決するのですが、そうすると音がボケてしまって・・・・恐ろしい世界です。そこに「801D4」のお話が出ました。ここまで鳴っているのにと引き留めたのですが、最新のB&Wにこれからの可能性を感じたとのことで導入されることになりました。結果的には音も仕上げ(新色ウォールナット)も大正解。

スピーカーの位置は1から探りベストポジションを見つけました。ノーチラスの位置からはだいぶ後ろに下がり、振りの角度も弱くなりました。その後「DG-68」で調整。強靭でキレのある低音、質感を伴ったまま量感もある中高域はノーチラスと比べヴェールを2枚、3枚剥いだ感じ、曇りがとれ空間の見通しが一段と向上。Ray of Lightを歌うMadonnaは強力なグルーヴの力で自在に舞う。この浮遊感はノーチラス時代にはなかった快感!

個人的な一番の驚きはElton JohnのCaptain Fantastic & Brown Dirt Cowboy、アルバムの表題曲でもある1曲目を聴いた時。私も10代から聴いているアルバムですが、正直言うとこのミディアム・スローのテンポ感がどうも怠くて2曲目のTower of Babelから聴くことが多かったのです。ところがT様の801でリズムセクションがバチッと決まるとこのテンポ感、後半になるにつれだんだん迫ってくる感じが痺れるくらいカッコ良い!この曲をテーマに持ってきたエルトンの意図が初めて分かりました。超名曲!好きでない理由を曲のせいにしていた自分の至らなさを反省した次第です。ちゃんと再生できてなかっただけということです。

ご本人は否定されますがT様はとにかくこだわりが強い。機器のデザイン、仕上げにボリューム、セレクタの感触、トレイの動作等、色々ありますが、実はこの納品のページもその一つ。以前掲載させて頂いたvol.100と今回、100と200というキリの良い回数に載せろというT様のご指定なのです。当然音にもうるさい。当店でお買い物されるお客様は皆さま音にうるさいのでそれは良いのですが、ご自身のイメージ通りの音が出ないと不満がこちらに飛んでくるので大変です。「ベースの音は良くなったけど、今のマラカスの音薄くない?」「えっ?もう一度聴かせて下さい」「ほら、ちょっと安っぽいよね、イコライザーで高域を持ち上げれば良いのかな」「そういう問題じゃないですね」「じゃあどうするの?」・・・ただおそらく音の好みのベクトルは近いのでしょう、私が自分で良いと思う状態にすれば音が出た瞬間に振り返りニヤッとしてくれるのが何気に嬉しいです。帰り際に「何度も連絡してごめんね。しばらく大人しくするからさ」そう言われると少し寂しい気もしつつ、ようやくご満足頂けたのかなとホッとしたのでした。

T様、本当にありがとうございました!

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