BILL EVANS TRIO「SOME OTHER TIME」「ANOTHER TIME」

Jack DeJohnetteにEddie Gómez、そしてBill Evans。プレーヤーの紹介と拍手から軽快に始まる「One for Helen」・・・1968年のライブ盤「At The Montreux Jazz Festival 」はジャズファン必携の一枚ですが、同じメンバーでのスタジオ録音とライブ録音が「発見」されそれぞれ「SOME OTHER TIME(2016)」「ANOTHER TIME(2017)」としてリリースされました。そして今回、タワーレコードより更なる高品質マスタリングを経てSACDハイブリットディスクとして発売されました。シリーズの監修は和田博巳氏、マスタリング・エンジニアの辻裕行氏によりキング・レコード関口台スタジオで2019年5月にマスタリング。

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https://tower.jp/item/4915038/Another-Time

「SOME OTHER TIME」こちらはドイツMPSスタジオでの録音。まず何と言っても演奏が良い!モントルーライブよりも密に語り合っているのが伝わってきます。濃やかなインタープレイ、特にエディ・ゴメスのベースが良いですね。エバンスのピアノが落ち着いていてリラックスしています。結成間もないトリオですが、すでに気心しれた仲間の演奏という感じで聴いていて幸せになります。私は知らない曲も多かったですが、「You Go To My Head」から素晴らしい、2枚組21曲のボリューム全ての曲が素敵です。「ANOTHER TIME」はオランダ、ヒルフェルスムでのライブ、1曲めの「YOU’RE GONNA HEAR FROM ME」は「SOME OTHER TIME」にも収められていますが、よりノリが良くスピード感溢れる演奏が楽しめます。「Who Can I Turn To」は同じライブでも「at Town Hall」の内省的な集中とは違う弾け方にワクワクします。

先日このディスクのマスタリングを行なったキング関口台スタジオ内のまさにマスタリングを行なったスタジオで聴かせて頂く機会がありました。 整然としたスタジオ内はPLAYBACKの最新SACDプレーヤー「MPT-8」がセットされていました。曲はAnother Timeの「VERY EARLY」、まずは96kHz/24bitのオリジナルマスターの音を聴かせていただきました。”オリジナルマスター”と言われるとそれが良いと思ってしまいがちな私ですが、「えっ?」と思うほどシンバルが強調されドラムスのバランスが明らかにおかしいのです。ライナーノーツで和田氏は控えめに書かれてますが、実際はかなり突出してました。それを整えるために辻氏は最初はイコライザーで調整したそうですが、和田氏がNGを出したとのこと。それも2度、そこで最後はなんと機器間のケーブルを変えて音質を調整、イコライザーの使用は最小限にとどめたそうです。それがその後で聴かせて頂いたSACD最終バージョン、素晴らしい出来でそんな”格闘”があったとは気づかない自然なバランスに仕上がっています。最後に「NARDIS」をじっくり聴かせて頂きました。ベースに関してはわずかにブーミーだったところを調整したとのことですが、単に締めたというのではなく楽器の質感と存在感はバッチリ捉えられえています。ベーシストでもある和田氏のこだわりを感じました。マスタリングは演奏の良さを引き立たせるための作業なのだと改めて実感しました。

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「オリジナルマスターに忠実に」と言ってもマスターに軽い補正をかければ商品にできる場合もあれば今回のマスターのような”オフロード”なものもあるようです。演奏者の意図を汲み取って「本来はこうだろう」と想像すること、それを実際に音にする作業が必要なのですね。それはディスクからその場の音を蘇らせるために奮闘する、私たちがオーディオで行なっている作業と同じだと感じた次第です。

和田氏は試聴会の終わりの挨拶で「ビル・エバンスファンの代表として特に力の入ったディスク」と仰ったのが印象的でした。店頭でも自宅でもヘヴィーローテーションです。

上遠野

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