本日は文京区にある株式会社キングレコードのキング関口台スタジオに伺いました。「ダイレクトカッティング実演会」というイベントにお誘い頂いたのです。初めての関口台スタジオ、配達で前の道は良く通っていたのですが、今日は電車、茗荷谷から歩いたので暑くて大変でした。
キングレコード株式会社村上潔氏、株式会社キング関口台スタジオ岩渕慎治氏、高橋邦明氏による挨拶と解説で始まりました。昨今のアナログ熱の高まりを受け、以前使用していたノイマン社製カッティングマシンを再稼働することにしたとのことです。本日使用したのは「VMS70」。これは91年に稼働を停止し倉庫にしまっていたものですが、非常に状態が良く保存されていたそうで丁寧なメンテナンスで復活を遂げたそうです。この後いよいよダイレクトカッティングのデモンストレーションに移ります。
チェロ奏者の辻本玲氏によるバッハ無伴奏チェロ組曲第一番ト長調よりプレリュードを演奏、それをダイレクトカッティングしたラッカー盤をすぐにプレイバックするというオーディオマニアにとっては夢のようなデモです。開始の放送がかかるとその場にいる全員の息がすっと消えて集中する感じが通常の演奏会よりも伝わってきます。朗々となるチェロの音色、生演奏素晴らしいです。
目の前で聴いた生演奏を聴いて数分後にアナログで聞けるというのは初めての経験。カートリッジはDENON「DL-103」GENELECのスピーカーによる再生です。一言で言うと先ほどの音。普段耳にするパッケージ商品やハイレゾの美しく整った音ではないのですが、生々しさは格段に上というか生そのものという感動を覚えました。そしてどこかSPっぽさを感じました。持っているのは小さなRCAの蓄音機ですがたまにSPを聴くのです。音楽を聴かせる力が強いところに共通点を私は感じました。辻本氏の感想は「いい意味で雑味が入っている」とおっしゃってましたが同感です。
休憩時間にカッティングルームを見せて頂きました。パッと目に飛び込んだのがTANNOY G.R.F. MEMORY。そして今回使用したノイマン「VMS70」。カッターヘッドも間近で見るのは初めてです。カッターの替えも見せてもらいましたが、ピントが合わず。
現在メンテナンス中の真空管アンプ式「VMS66」。どんな音になるのだろう?オーディオマニアの端くれとしてはカッティングマシンの音の違いも気になりますね。こんなに凄い機器が2台もあるのはおそらくここだけでしょう。
後半も豪華です。日本を代表するソリストの録音現場に立ち会わせてもらいました。まずヴァイオリンで米元響子氏はイザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番イ短調、第3楽章のピツィカートの一音一音にイメージが込められているのがビンビン伝わります。ピアノの上原彩子氏はチャイコフスキー「くるみ割り人形」より花のワルツ。編曲もご自身でされたもの。とってもお洒落で華麗な演奏でした。大矢素子氏はオンド・マルトノでラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」オンド・マルトノの生演奏は初めてです。なんか胡弓に似た雰囲気の音だなと思って浸っていましたが、後半は何この音!という驚きの連続でした。
本日の演奏は後日LPでプレゼントしてくれるそうです。生で聴いた音楽がどんな風にレコードに収められるのか本当に楽しみです。レコードが届きましたらイベントなどで紹介したいと思います。「ダイレクトカッティングレコード」に是非ご注目下さい!
株式会社キングレコードの皆様 本当にありがとうございました!
上遠野
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